コラージュ・題字:堀井和子

堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」

堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。はっとさせられるお顔が目に飛び込んできました。

第40回:ピカソの本/木の臼にコケとムーミン

「ピカソ石版画全集 IV」の表紙カバー、こちらは裏側。しっかり目を見開いているような力強い印象の顔が描かれています。

表紙カバーの表側は目を細めてウインクしている顔。墨色1色の線の重なりと、白い紙のコラージュを生かした構成が面白く、じっと見つめているとワクワクしてくるのが不思議です。

この本を見つけたのは3ヶ月前、ガラスケースの一番下の段に、濃いベージュ色に経年変化した表紙を見て気になり、古書店の方に頼んで中を見せていただきました。紙の厚みや素直な質感、印刷の色合い、本自体の構造(フレンチカバーのスタイルです)―― 昔の本は何て美しいのだろうと溜息をついたのを覚えています。

ピカソの作品では、手描きの字を生かしたポスターや、本のカバーまわりの仕事に魅かれていて、アメリカに住んでいた1986年に SOHO のギャラリーで "Affiches Originales des Maître de l'Ecole de Paris" というリトグラフのポスターを買いました。オレンジ色に近い朱赤、黄緑、黄色の線で描かれた顔と文字が、明るく楽しい1枚です。我家のダイニングルームにずっと飾っています。

2ヶ月以上、頭の片隅にこの本があって、2度目に見た時ちょっと高かったけれど心が決まりました。

背表紙には、タイトルではなく、ギザギザの線が描かれているだけ。こんな表紙カバーがあるのか・・・と、表裏の表情を見つめ、何だか嬉しくなってしまいました。家へ抱えて帰ってパラフィン紙をはずしたら、かなり色が変化しているように見えたのが、カバーのパラフィン紙だけで、本自体は白が綺麗に保たれていて、よいコンディションでした。

中のページ見開きは、1958年の陶器の展覧会ポスター。こちらもクレヨンとコラージュの作品を石に移したと説明があります。

妹の家の玄関で、いいもの見つけました。

20年いや25年前、姪や甥がまだ小さい頃、餅搗きの臼を買ったことがありました。どこかへしまいこんでいた臼が出てきて、深くしっくりした色になった木の様子が魅力的だったので、ふんわりしたコケやプランツを移植したのだそうです。

ソリに乗ったムーミンが居心地よさそうに見えます、臼をこうして見ると、とても存在感があって美しい。妹夫婦の工夫で、冬の玄関や庭に、新しい素敵が増えています。

散歩の途中で見た寄せ植え。緑の植物だけの取り合わせが爽やかです。

堀井和子

堀井和子さん プロフィール

1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
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2018年1月19日 公開

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