
第1回
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コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。今回は、「透明」の奥深さに見入ります。
20〜30年前、どちらかと言うと、あまりヴィンテージ感のない透明な色、何気ないデザインに魅かれて、我家で使ってみたくて選んでいました。当時見つけた器で、特に気に入っているものを並べてみました。
右上は、アイノ・アァルトのデザインをベースにしたプレスガラスのシリーズで直径10.5cm の小皿。2枚、4枚・・・とセールの時などに買い足して、10枚になりました。そのうち2枚はプレスガラスで、アイノ・アァルトのデザインらしい。2枚は再生ガラスのような出来具合、6枚は木型や金型で吹いて作られているのではと、ガラスの仕事に長く携わっている三枝さんに伺いました。私が一番好きなのは、木型や金型を使ったタイプ。型を使うけれど、ガラスの温度や濃度、流す具合など、職人さんの技術と経験によって美しさが生み出されるように思うのです。
この6枚、外側の段々になった部分は、ラインがおっとりと緩やかに見えますし、底の部分は流れるようなガラスの瑞々しさが感じられます。
現在作られているイッタラのこのシリーズのプレートは、段がカチッと直線的なデザインになっていて、ヴィンテージのものとは印象が全く違っています。
左は、カイ・フランクの Luna シリーズ、直径15cm のプレート。(プレスした後に
、縁を熱して丸みを付ける作業の写真を、カイ・フランクの本の中で発見。)Luna シリーズの器はアンバーの茶色のタイプはよく見かけましたが、透明なタイプにはほとんど出合えませんでした。
底から縁へかけて、なだらかな傾斜があるので、ソースを添える夏の冷たいデザートにもぴったりです。素直でゆったりとしたこのフォルムが好きで、20年前、一目惚れで5枚買うことが出来てよかったなぁと思います。
右下は、カイ・フランクの Prisma シリーズのタンブラー。ストックホルムのガムラスタンのお店で、6個セット ヌータヤルヴィ工房の紙箱入りを見つけたのは1990年代中頃だったでしょうか。少しずつ角度を変えたグラスの側面がエレガントなデザインです。底の厚み部分も何気なさそうで、たいそう美しいです。
1丁目ほりい事務所で作っているジャム入れも金型を使っていますが、プレスガラスとは違う、おっとりとした温かい表情を見せてくれます。使った後、洗っている時に、ガラスの流れみたいなニュアンスを美しく感じます。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2017年6月2日 公開

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