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HAU 藁谷真生の「今着たい服、こんな服。」

CLASKA が発信するアパレルブランド「HAU(ハウ)」のデザイナー藁谷真生が綴る、
服作りにまつわるエピソードや日々のおしゃれにまつわるあれこれを毎週土曜日更新でお届け。
今回は、HAU の服作りにおいて「コーディネーター」的な役割を果たしてくださっている、 バンディエラブルーの並木亜弥さんをゲストに迎えた特別対談です。

特別対談企画/デザイナー 藁谷真生×バンディエラブルー 並木亜弥さん

第10回:手仕事を感じる服づくりの秘密。

DO TABELKA

Profile

藁谷 真生(わらがい・まお) 写真左
エスモード・ジャポンを卒業後、アパレルメーカーにて約8年にわたり数ブランドのデザインを担当。2011年、自身のブランド「BLANKET」を設立。約5年間活動した後に2018年、CLASKA より「HAU」をスタートさせる。

並木 亜弥(なみき・あや)さん 写真右
日本女子大学、文化服装学院を卒業後、2008年よりOEMメーカーの「バンディエラ・ブルー」にて営業兼生産管理を担当。
http://www.bandierablu.co.jp

 

ひと針、ひと針。
HAU の服は、人の手でつくられる。

 

────今回の HAU 連載は特別編として、HAU の服作りの裏側をご紹介する対談企画をお届けします。「バンディエラ・ブルー」という会社に所属されている、並木亜弥さんをお迎えしました。

並木さん(以下敬称略):よろしくおねがいします。

────前回の対談企画では、パタンナーの鉢木利恵さんをお迎えして、主にHAUの洋服の“かたち”ができる背景についての話をお聞かせいただきました。今回は、また少し違った角度からの話になりそうですね。

藁谷:そうですね。並木さんのお仕事は、もしかしたら一般の方々にはほとんど知られていない部分かもしれません。

並木:そう思います。この対談のお誘いをいただいてからずっと、どういう風に説明をしたら自分が関わっている仕事の内容や魅力をお伝えできるかな……と考えていました。「海外で洋服の生産を希望されているお客さま(ブランド)と海外の工房をつなぐ仕事」、といえばわかりやすいでしょうか。

藁谷:私は、「コーディネーター」という言葉がぴったりくるんじゃないかな? と思っていました。実際に、今回の春夏コレクションの中で並木さんが関わってくださった商品がいくつかあるのですが、今回は「fig シリーズ」(※4月27日販売開始予定)の制作過程をご紹介するのが、一番わかりやすいんじゃないかなと思っています。

並木:そうかもしれませんね。

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"fig dress"(※4月27日販売開始予定)

────お二人の付き合いは長いんですか?

藁谷:私が最初に入った会社でお仕事をご一緒したのが最初ですよね。10年くらい前でしょうか。

並木:はい。当時、私はまだ新入社員でした。藁谷さんは既にデザイナーとして活躍をされていて……。

藁谷:その時からのお付き合いですから、結構長いですね。

────先ほど海外の工房とブランドをつなぐお仕事、とご説明いただきましたが、具体的にはどのようなジャンルの製品を扱ってらっしゃるのでしょうか?

並木:布製品、刺繍、ニットなどが代表的なものになりますね。クライアントが希望する様々な条件を加味して、最適な工房を提案させていただいています。

藁谷:今回の「fig シリーズ」に関しては、ベトナムの工房に依頼しました。そもそも、「フレンチノット(粒刺繍)」を手刺繍で施した服を作ってみたいな、というアイデアが浮かんだことが始まりだったんです。HAU の服作りの大切なキーワードでもある「手仕事」を刺繍で表現して、大人っぽさやオートクチュール感が感じられるシリーズを作れないだろうか、と。でも……。

────刺繍というと、なんとなく「かわいいもの」を想像します。

藁谷:そうですよね。HAU の服はあくまで「大人の日常着」でありたいので、かわいい印象になってしまうことは避けたかったんです。色々と悩んだ末に思いついたのが、「生地と同じ色の糸で刺繍を施す」という手法でした。たとえば黒いリネン生地に、黒い糸でフレンチノットの刺繍を贅沢に施してみるのはどうだろう? って。

並木:藁谷さんから「フレンチノットの刺繍が得意な工房はありますか?」というご相談をいただいて、技術的なことはもちろん HAU の服作りのテーマなども踏まえて刺繍が得意なベトナムの工房を提案させていただきました。たとえば、これは今回の「fig シリーズ」の縫製と刺繍を担当してくれた工房が手掛けた刺繍のサンプルなのですが・・・。

DO TABELKA

────素敵ですね! なんだか懐かしさを感じます。ベトナムの手刺繍は有名ですものね。フランス統治時代にもたらされたヨーロッパ刺繍の技術が、今も継承されているという話を聞いたことがあります。

藁谷:ノスタルジーな雰囲気があっていいですよね。

────並木さんの会社は、ベトナム以外にも複数の国とコネクションをお持ちだと思います。今回、なぜベトナムだったのでしょうか?

並木:藁谷さんからリクエストをいただいた刺繍は、実は中国でも製作することができたんです。でも面白いことに、同じ刺繍でもその国の職人さんによって仕上がったものから受ける印象が異なるんですよね。刺繍の仕上がり見本をお見せしながら説明をして発注するのですが、ベトナムの工房の場合は仕上がったものを見ると「揺らぎ」があるというか……。

藁谷:いい意味での“いい加減”さがあるんですよね(笑)。のびのびとしていて、愛おしくなってしまうような。

並木:一方、これと同じ内容のものを中国の工房にお願いするとベトナムとは正反対で、見本どおり、ピシっとした完璧なものがあがってくるんです。それはそれで美しいんですけど。

藁谷:私は、手仕事のぬくもりを感じられるものが作りたかったので、必ずしも完璧なものである必要はなかったんです。それで、ベトナムの工房にお願いしようということになりました。

DO TABELKA

────お国柄ということなんでしょうか(笑)。

並木:そうなんです(笑)。本当にこれは感覚の問題なのですが、私はその「揺らぎ」に人の手のぬくもりを感じるんですよね。ベトナムの自然が溢れる村で、女性たちがひと針ずつ縫って・・・という風景まで浮かんできて。どっちがいい、悪いということではなく、デザイナーがどういうイメージの服を作りたいか? ということを大切にしたいと思っています。

DO TABELKA

────面白いですね。語弊を恐れずにいうと、海外で洋服を製造するということに対して、もうちょっと違うイメージを持っていました。あくまで、「コスト感」が最重要視される世界なのかな? と。並木さんはデザイナーの想いやクリエイティブに関する細かいニュアンスまでを踏まえて、デザイナーと職人をつないでくれるんですね。

藁谷:並木さんのようなお仕事をしている方、全てがそうではないかもしれません。私としては、並木さんのスタンスがすごく嬉しいんです。「藁谷さんがこう言ったから」ではなく、ご自身のプロとしての意見を踏まえて「こういうかたちはどうですか?」という提案をしてくださるので。

────素敵な関係性ですね。ちなみに……どうしても刺繍にばかり目が行ってしまいますが、服の製造工程にもかなり「手仕事」が入っているそうですね。

藁谷:まずは刺繍が入っていない状態のリネン生地でサンプルを作り、その上に刺繍をカラーコピーしたものをカットしてランダムに並べて、刺繍の位置を決めました。そのあとに、職人さんがひと針ひと針縫ってくれて。ちなみに洋服を縫う際の生地も、工房の方々が一枚一枚裁断してくださったそうです!

DO TABELKA

────気の遠くなるような、アナログな作業ですね。これまでのお二人の話を聞いて、改めて「fig シリーズ」を眺めてみると、なんて贅沢な洋服なんだろうって思いますね。藁谷さんは、実際に出来上がったものを見てどう感じましたか?

藁谷:まさに期待以上でしたね。最初は技術面を信頼して発注したのですが、仕上がってみたらほかにも色々な「価値」がついて戻ってきた! という感じです(笑)。

────その「価値」とは?

藁谷:先ほど並木さんもおっしゃっていましたが、想像以上に「手仕事」の痕跡が感じられるものになったということ、それからベトナムの「空気感」を纏った服ができたな、と。デザイナーとしても、想像力をかきたてられる服になりました。実はこのシリーズ、最初はワンピースのみを製作予定だったのですが、その仕上がりがあまりによかったので、急遽追加でパンツとバッグ(※4月27日販売開始予定)も作ってしまいました(笑)。

並木:そう言っていただけると嬉しいですね。藁谷さんは、作りたいもののイメージはしっかりあるけれど、任せるところは任せてくれる。こちらから提案する「余白」を残してくださるというか。任せていただくことで、こちらも心地よい緊張感を持ってお仕事させていただいています。私が藁谷さんと一緒にお仕事をさせていただいていて楽しいのは、こういう部分ですね。

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────前回ご登場いただいたパタンナーの鉢木さんもそうでしたが、並木さんも藁谷さんの服作りにとことん向き合ってくださっているんですね。決してシステマティックな仕事の仕方ではなくて。藁谷さんの周りには、似たマインドの方が集まるのでしょうか(笑) 

藁谷:この連載では何度も言っているのですが、服作りって、一人ではできないですから。今回、この「fig シリーズ」を作ったことで、デザイナーとして新たな発見もありました。並木さん、本当にありがとうございます。

────例えば「アジアの手仕事シリーズ」みたいな感じで、刺繍のシリーズを定番化していくのも面白いかもしれませんね。並木さん、本日はありがとうございました!

並木:こちらこそありがとうございました。藁谷さん、今後ともよろしくお願いいたします!

 

<HAUの取扱い店舗に関して>
CLASKA Gallery & Shop "DO" 各店、および全国各地のセレクトショップにて順次展開中。CLASKA ONLINE SHOP でも全ラインナップ展開します。(順次発売予定)

卸販売に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。
hau_clothes@claska.com

2019年4月20日 公開

編集・取材・文:落合真林子(CLASKA)
インタビュー撮影:速水真理(CLASKA)