

堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」
写真・文:堀井和子

GALLERY CLASKA の8月の “MONTE DE PECAS 展” で出合った、林青那さんの作品。
1丁目ほりい事務所で製作した凧や竹ヒゴのカゴ、モビール、木製の車、 Objet 、アート本、伯父の作った楠のテーブルなどが置いてある部屋に、額を掛けたところです。
点模様の “PECAS(そばかす)” シリーズの作品が並んでいる中で、画面いっぱいに描かれた長方形と力強い文字に、ぐっと引き寄せられた気がします。
いつも “一番魅かれた作品は” と主人と話すのですが、その1点がぴったり一致して、魅かれた度合も強くて決めました。
紙の生成り色と風合い、絵や文字の黒が、モノクロームと言ってもユーモアを含んだような温かさで、カッコいい。
私は佐野繁次郎さんが装丁やタイトル文字を手掛けている単行本の表紙が大好きなのですが、MONTE DE PECAS のこの絵の表紙の本、あったら素敵だろうなぁと。

ソットサスの展は、展覧会紹介写真の端に写っていたガラス作品が気になって、京橋のアーティゾン美術館へ出かけました。
オリベッティのタイプライター “ヴァレンタイン” のヴィヴィッドな赤と、角が丸いフォルムは、使わなくても欲しくなるデザインだなぁと思いますし、家具もよく知られていますが、花瓶をデザインしていたなんて。
最後の展示 Section 5 “1990年代 ── 飽くなきデザインの冒険” には、高さ60〜90cmのガラスの花瓶が、ずらっと並んでいます。

出口近くの1点は、様々な色と形のガラスボードをアルミワイヤで吊り下げたユニークなデザインで、ハッとしました。
1丁目ほりい事務所でも、平たい円形ガラスボードを作ったことがありますが、ガラスの上面、底面、縁のカーヴなど、透明でいて、おっとりとしたガラスの流れを感じるように仕上げるのは、なかなかむずかしく、希望するデザインに近付けるのに時間がかかりました。
濃いブルー、浅い緑、深い緑、黄色、赤 ── こんなにたくさんの色とプロポーションのガラスボードを製作して、ひとつの作品にするなんて、とても贅沢な企画だと思います。
キャリアを重ねて、1990年代にソットサスがガラスでコンポジションを試みたから、作れたのかなぁ。
こんなガラス作品を見ることができてよかったです。

John Cage が作曲した “ 4'33" ” にまつわる作品集。 (ドイツでの展覧会に合わせて刊行されたもので、 Dieter Daniels と Inke Arms による編集。)
散歩の途中、ワタリウムのショーウィンドーに並べられていたこの一冊に目がとまりました。
John Cage の “Mud Book” については、 “いいもの見つけました” 第41回 で触れましたが、泥んこ遊びが伸びやかに描かれている絵本で、2冊持っています。
John Cage という名前を見たので、地下の書籍コーナーで手に取ってみることに。

4分33秒の静寂を表わす楽譜や、パフォーマンスの記録を、こういう仕立ての本に仕上げていることに驚きます。
24cm×33.5cm の大きな版型なので、表紙の 4'33" とタイトルなどの文字のレイアウトが、ダイナミックで印象的。
中の紙質と、 B Scores and Documents 部分の黒の印刷の色み、活字のレイアウトも、溜息が出るくらい美しい。
黒い地色と白い数字の表紙に、ワッと魅かれてしまって、正直なところ、ジャケット買いでした。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」
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