堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第35回:"OCÉANO" /カフェの黒い椅子と銀色のテーブル

写真・文:堀井和子


"OCÉANO" は縦長のポップアップ絵本で、 anouck boisrobert と louis rigaud の作。

買ってからだいぶになります。

久しぶりにページを繰ってみたのですが、どの見開きも、海や船、魚たちのイラストの色使いや表現が繊細で美しく、改めてポップアップの魅力に心が弾みました。

下の部分は、鯨の親子、クラゲ、亀、小さい魚たちが泳ぐ、濃いブルーの海の中。

上の部分は、海の上の船と、波間に鯨の尻尾の先が少し見えているシーン。

穏やかに晴れた空は淡い水色で、船に乗っている人それぞれの動きもちゃんと描かれています。

次の見開きは、半透明の氷山の描写。

海の中に何層も重なる氷と、その合間を泳ぎ廻る様々な海の生きものが、立体的に迫ってくるのがすごい。

このポップアップの紙の造作は、とても見ごたえがあって、ロマンティック。

大人が見入ってしまうポップアップ絵本だと思います。

2025年春にオープンした Deus Ex Machina Harajuku 。

ガラス越しに見えるカフェの黒い椅子と銀色のテーブルが、ずっと気になって気になって・・・。

実際にカフェに入ってみたのは、1年以上経過した今年の夏でした。

椅子はメタルの脚が、プルーヴェのデザインに似た印象。

座面と背もたれは、多分プライウッドを墨色でペイントした仕上げかたのようです。

真黒ではなく、ほんの少し墨色っぽいトーンに押さえてあるので、寛げる温かな雰囲気に感じられます。

テーブルも、プライウッドに、細かい傷が付いたようなヘアラインのステンレスかアルミの板を貼ってあって、光の反射がやわらかです。

ラフな木の床とむき出しのコンクリートの柱、高い天井と開口部のガラス面の空間に、この黒い椅子と銀色のテーブルがよく合って、カッコいい。

ラップトップとノートをテーブルに置いて仕事をしている人も見ましたが、私もここで絵コンテを描いたり、原稿を書いたりしてみたくなりました。

音楽だけは、ちょっと違うタイプが流れていたので、1980年前後のプログレッシブロックの UK や ASIA の曲を聴けたら、サクサクと作業をこなせそうかなぁ。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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