堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第34回:Vespa S100/憧れの家の切り抜き記事/"EVENT BOX"/バスクのクロス

写真・文:堀井和子


散歩の途中、路地に面したショールームのようなスペースに、古いスクーターが置かれているのが見えました。

イタリアのメーカー Piaggio 製の Vespa S100 は、丸型ヘッドライトと、おっとりしたオフホワイトのボディがかわいい。

自動車もそうですが、スクーターも、旧車って親しみ易い温かな雰囲気を持っていて、実際に乗らなくても、持っていたい、近くに置いて見ていたいという気持ち、わかります。

褪めた赤褐色のレンガの壁と、石畳風のグレーのフロントヤードがよく合って、何だか70〜80年代の LP のジャケットみたいだなぁと。

私たちは一軒家を建てたことも、マンションのリフォームをしたこともありませんが、住む家を建てるとしたら、こんなイメージかなぁという雑誌や切り抜きページを、今も大事に持っています。

右は2001年発行の雑誌 MONUMENT RESIDENTIAL SPECIAL に掲載されていた、ロンドンの狭小住宅のキッチン&ダイニングスペース。

ガラス面で切り取られた街の眺めにハッとしましたし、シンプルだけれど、実に美しいデザインとレイアウトのキッチンに憧れます。

左の切り抜きの方は、きちんとした家ではなく、簡易なアトリエ、作業場兼住居といったタイプ。

カウンターや仕事スペースは、プライウッドのラフな構造ですが、そこに、アルネ・ヤコブセンが教会用にデザインしたチェアが、カッコよく配置されているのです。

ガラスをはめ込んだ黒いドアも、ワクワクしてくる設計だと思います。

こんなラフでアトリエっぽい家にも魅かれていますが、40代で拠点を移して、というタイミングなら、実現の可能性があったかも。

パピエ・ラボのお店で見つけた "EVENT BOX" は、ロンドンのアーティスト Tim Blann と日本の Detour が2025年に製作したカードセットです。

横8.3cm 縦5.3cmのカード50枚は、オフセット印刷、 BOX は活版印刷によるもの。

青1色で、月や雪、階段、車、飛行機、山などが表現されていて、1枚1枚、力強さ、楽しさに溢れています。

何枚かカードを取り出して、シーンやストーリーを考える遊びかたが説明書きに記されていますが、1枚に見入って、自分の記憶の中の、月や山の様々な輪郭を引っ張り出せるのが面白い。

フランスのバスク地方で30年前に買ったテーブルクロスは、今も我家で活躍してくれています。

濃紺の太いラインと両サイドの細いラインが、縦に2ヵ所入った潔いデザインで、生地の織りかたを工夫してあるせいか、アイロン掛けが要りません。

洗濯の後、20分くらい乾燥機にかけて、その後広げて乾かすだけでOK。

アンダークロスを敷いた上に掛けて、手のひらでテーブルにフィットさせると、自然に馴染むところがすごいなぁと。

大きめの丸パンをのせたのは、長谷泉さんに作ってもらった竹ヒゴのトレーです。

パンが室温に冷めてから、切り分け、冷凍しています。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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