堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第30回:木製のクーペ/BOULANGERIE の T シャツとパンを運ぶトラック/ドライブ旅行

写真・文:堀井和子


6月5日からスタートする GALLERY CLASKA の企画展のために、いいなぁ、好きだなぁと思う旧車をイメージした木製品を制作しています。

自動車の真横からの写真が載っている雑誌を買って、昔の SAAB 900(1st) や Peugeot 205、Rover Mini などの車のアウトラインを描いて、長谷泉さんと打ち合わせをして、木製の車に仕上げてもらっています。

こちらは、タイヤを着けて、ペイントする前のクーペと呼んでいる1台。 雑誌に載っていなかった私の好きな車の形です。

今年の 7/7 の白 T シャツは、パンを運ぶ小型トラックとトースター柄。

企画展には自動車だけでなく、はたらくクルマやスクールバスも並びます。

このシルバーのトラックは、 BOULANGERIE の文字を描き入れる予定です。

車の免許を取ったのは、30歳になってから。

アメリカで暮らした3年間に、ドライブ旅行の楽しさを覚えたと思います。

40〜60歳の頃は、フランスの田舎を点々と廻る旅をくり返しました。

庭が美しかったり、眺めのよい小さいホテルや、地方の家庭料理が美味しそうなシャンブルドットを目的にして、ルートを決めていました。

朝食をゆっくり取って10時頃出発し、次の宿泊地近くの街に13時頃着いて、マルシェが開かれている広場のレストランで昼食、15時過ぎにホテルにチェックインします。

初夏に旅することが多かったのは、田舎道を走っていて車窓から見える森や草原、丘の新緑の風景が素晴しかったからです。

写真はフランス南西部、スペイン国境近くの Lio の風景。

Perpignan から西へ入っていくのですが、最初は整備されたパークウェイで、その後、切り立った崖脇の極く狭い山道が続き、かなり緊張しました。

でも、着いた Lio のあたりは、ピレネー山脈やスペインの方までが見渡せ、息を呑む美しさでした。

車を走らせているのが、ただただ嬉しかった。

旅のノートには、 Boulou _ Perpignan _ Prades _ Saillagouse _ Lio のルートと、 “黄色い列車が緑の山合いを走るのが、ものすごく、かわいい” 、 “ディナーの間、ガラス越しにずっとピレネーやスペインの街が見渡せて、空もユニークな形の雲も、白、グレー、シャンパン色、オレンジピンクと刻々と変わっていく。 夕暮れから日没まで、光が点々と灯るまでの時間が贅沢” なんていうメモが書いてありました。

ふと田舎道の緩やかなカーヴを思い出せるくらい、初夏のドライブ旅行の記憶は、特別な気がします。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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