堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第24回:ブルキナファソのカゴ/CORBO のお財布/中野幹子さんのグラス

写真・文:堀井和子


表参道の国連大学前で毎週土、日に開かれているファーマーズマーケットでは、季節の果物や野菜、蜂蜜やピーナッツバターなどを見て廻ります。

246の道路側のスペースに、世界各地のカゴや編みバッグが、吊り下げたり並べたりしてあって、いつも引き寄せられていました。

風が、やっと秋らしい爽やかさに変わった日曜日、久しぶりに買うことを決めたのが、ブルキナファソの “スンバラ” と呼ばれるカゴ。

エレファントグラスという水草を十分乾かしてから編んだもので、細い水草からしっかりしたカゴを作る構造、技法が面白い。

直径29cm 高さ16cmで、縁も明るめの樹皮を巻き付けてあるのが、何気なくていいなぁと思います。

我家にカゴはたくさん存在しているのですが、隙間が美しいカゴには弱くて、素通りできませんでした。

20年近く使っていたお財布の、小銭入れ部分の布地が破れて、コインが裂け目に入ってしまうようになりました。

ナチュラルな革の色が年月を経て、擦れたベージュ色がかった部分と、傷ついて深い色になった部分に変化して、何とも美しい。

ずっと、とっておきたくなるくらい雰囲気があります。

それで、ゆっくり見つけられたらというペースで探し始めました。

主人が愛用している小銭入れと名刺入れは、どちらも、神宮前の小さい工房兼お店 “CORBO” の製品で、使い勝手がよく、ブラウンの革の経年変化もカッコいい。

静かな通りに面したお店に立ち寄って、お財布をひとつひとつ手に取って見たところ、軽さや触れた時の優しい感覚を気に入ったのが、このタイプでした。

お店の方が、ベージュ、カーキ、ブラウン系の4点を並べて見せてくれました。

迷いなく、このブラウンに決めたのは、やはり、今まで使っていたお財布の、経年変化した後のブラウンを、知ったからかもしれません。

直径5cm 高さ5.5cmの極く小さなグラスは、7月に木村硝子店で開かれた個展で選んだ、中野幹子さんの作品。

柵に並んでいたグラスは Sold out でしたが、制作していただけるということで、出来上がりを待って、9月初め我家に。

ひとつずつ宙吹きで作ったグラスの側面と底面に、街の建物をグラビュールで描いてあるのですが、小さな自動車が1台見えて嬉しくなります。

以前、手描きの文字や子供の絵をプリントしたグラスを制作したことがあって、プリントでは、こんなふうにグラスの縁ぎりぎりまで、そして側面全面にデザインをプリントすることが叶わないことを、学習しました。

作り手が丁寧に、極く細い線に思いを込めて仕上げた、とても贅沢なグラスです。

アルコール度数の高い、透明なお酒が合いそうですが、酔いが回ると、グラスに描かれた街が映画のように動き出さないかなぁと。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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