松澤紀美子さんのポシェット

松澤紀美子さんの MARU ポシェット

布で自身が欲しい形のものを求め、心地のよい素材や使い勝手、始末のよい丈夫な縫製を考え抜いた作品づくりを日々続けられている松澤紀美子さん。このたび松澤さんの布の鞄を元にした、CLASKA Gallery & Shop "DO" オリジナルの革のポシェット 第2弾が誕生しました。

松澤紀美子さんのアトリエを訪ねて

元になった布の鞄のこと、また革製で商品化するに至った経緯についてお話をうかがいました。

松澤紀美子さんのポシェット

服のポケットのような役割の鞄

────モデルになった布の鞄。この鞄はどのような発想から生まれたのでしょうか。

松澤さん:はじまりは、服のポケットのような役割の鞄を作ろうと思ったことからでした。身体に沿い、辛うじて財布と携帯電話が入るもの。男性がジーンズのポケットに財布と携帯電話を入れて手ぶらで歩くような身軽さです。

そこで、ポケットが腰の位置に来るように。鞄というより、服の一部という感覚で使ってもらえるように考えました。

松澤紀美子さんのポシェット

「まん丸」な形の不思議な魅力

────何と言っても「まん丸」な形が特徴ですが、なぜ「まん丸」なのでしょうか。

松澤さん:収納力を考えるなら、四角やその角にRが付いている形の方がもちろん効率的です。だけれど、丸という形が好きなので、丸にしたくなりました。

丸って、描くときにどこから描き始めてもよくて、始まりも終わりもない、何にもしばられていない、フリーで制限がない、無限。そんなところに、すごく惹かれるんです。

松澤紀美子さんのポシェット

松澤さん:鞄と同時に、丸型でファスナーを一周させたポーチの制作も進めていました。入れる物によってファスナーの口の開きをいくらでも変えられる面白さは、丸だからこそできることですよね。

いつも自分が機能性や使い勝手を考えすぎていることへの反発もあったかもしれません。自立せずコロンと転がってしまう不安定さも含め、「丸」の魅力を楽しめる鞄を作ろうと思いました。

松澤紀美子さんのポシェット

長財布とスマホがちょうど入る

────直径とマチの寸法はどうやって決められましたか?

丸の直径は、自分の長財布が入るギリギリの線(Φ20cm)で決めました。マチは、長財布と携帯電話が入るプラスアルファ程度の薄さ(3cm)です。

わたしはいつも荷物をいっぱい持ち歩くのですが、大きな荷物とは別でこの鞄を使っています。パスモや携帯電話を入れておけば、すっと出せるところに常にあるので安心です。

松澤紀美子さんのポシェット

黒いファスナーと本体の一体感

松澤さん:元になった布の鞄は、ベルギー製の綿麻生地。内側に共布を使って間に芯材を入れ、形と強度を出しています。ファスナーの存在感を主張させたくなかったため、金属感や色のない黒のファスナーを探して付けました。

────革製で商品化することになった経緯を教えてください。

布よりも革に向いていると発見

松澤さん:布でこの鞄を作った時に「これは革向きだ」と思い、CLASKA Gallery & Shop "DO" に提案しました。というのも、生地よりも革の方が、まん丸の形を表現しやすいんですよね。

生地で作ると洗える前提にしないといけないと思いますが、洗うたびに柔らかくなってしまいます。その点、革は絶対的に形をキープできますし。

革は、端を切りっ放しで処理できることも大きいです。小さなサイズの鞄なので、作るには細かい作業があります。厚みのない所にショルダーを縫い付ける際にも、切りっ放しにできる革の方が仕上がりがきれいです。

また、布だと入れる物の形や重さによって本体が変形しがちですが、それを防ぐ意味でも革の方が安定していると感じます。

────布の鞄と形も寸法もまったく同じものを、革で再現することができましたね。張りがあり、まん丸の形がよりしっかり出ています。

松澤紀美子さんのポシェット

揺れる空中ブランコのイメージ

松澤さん:振られて揺れる、空中ブランコのイメージの鞄ができました。使っていただけたらうれしいです。

────わたしはこの鞄をスタッフが持っているところを撮影している時、体に沿って音符が揺れているように見えました。とてもいい、装いのポイントになります。お客さまにお届けするのが楽しみです。今日はありがとうございました。

松澤紀美子さんのポシェット
松澤紀美子さんのポシェット
松澤紀美子さんのポシェット

2017年に松澤さんと作ったポシェットの第1弾「松澤紀美子さんのポシェット」も、大好評販売中です。

松澤紀美子 | Kimiko Matsuzawa

1969年、岡山県倉敷市生まれ。高校卒業後、アルバイトを経て上京。32歳で「petit cul」を開く。34歳、澄敬一と出会う。「petit cul」を閉店。2005年、早稲田の元製本工場だった一軒家へ転居。布の仕事に取り組んでいる。
petit-culの日記

ご購入の前に

「松澤紀美子さんのポシェット」は、CLASKA Gallery & Shop "DO" が提携する国内の工場で製造を行っています。松澤紀美子さんご本人が製作(縫製)されているものではありません。また、松澤さんのアトリエでは販売されていませんのでご理解願います。

2019年10月14日 公開
写真・文:CLASKA ONLINE SHOP 速水真理