HAU

2019年春、CLASKA が発信する新たなアパレルブランド「HAU(ハウ)」がデビューします。
コンセプトは『日常の中で感じる非日常感』。
日々の暮らしの中で気負えずカジュアルに着られるものでありながら、
身に纏うことで気分が高揚する大人の女性のための日常着を───。
デザイナーの藁谷真生が語る
HAU 誕生の背景や服づくりへの思いを、前編・後編2回に分けてお届けします。

Profile
藁谷 真生(わらがい・まお)
エスモード・ジャポンを卒業後、アパレルメーカーにて約8年にわたり数ブランドのデザインを担当。2011年、自身のブランド「BLANKET」を設立。約5年間活動した後に2018年、CLASKA より「HAU」をスタートさせる。
Instagram @hau_clothes

「洋服」は、暮らしの中の一部である。

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────いよいよ、新ブランド「HAU(ハウ)」がスタートします。改めて、ブランドが誕生するに至った経緯を教えてください。

藁谷さん(以下、敬称略):以前手掛けていた「BLANKET(ブランケット)」は、ブランド誕生当初からCLASKA Gallery & Shop "DO"(以下、ドー)で取扱いをしていただいていたのですが、2年前に第2子を出産したことをきっかけに生活のリズムが変わり、これまでと同じペースで続けていくことが難しくなりました。ただ、ドー のディレクターの大熊健郎さんとは「またいつか、何か一緒にできたら」というやり取りはしていて、子どもが少し手を離れ始めた1年ほど前からデザイナーとして入らせていただき、「HAU」を立ち上げる準備を始めました。

────CLASKA としても、デザイナーを迎えてアパレルブランドを発信するのは初の試みです。ご一緒していただくにあたり、藁谷さんの中で「やるならこういうものを」という明確なビジョンはあったのでしょうか?

藁谷:独立して自分のブランドを立ち上げてからずっと、「暮らしの中の一部として存在する洋服」ということが自分にとっての大きなテーマでした。ですから、心地よい生活のあり方を提案し続けているドーと一緒にものづくりをすることは、私にとってとても意味のあることだったんです。軸となるコンセプト『日常の中で感じる非日常感』というものは私の方で考えていたのですが、大熊さんには「チロルっぽいロマンティックな要素を入れて欲しい」というリクエストをいただきました。

────チロルっぽさとは……?

「藁谷さんがデザインする服は、シンプルな中にもノスタルジー感やストーリー性を感じられるところがいい」と言ってくださって。それを「チロルっぽさ」という言葉で表現されたのだと思います(笑)。新ブランドの「HAU」でも、そのチロル感をさりげなく取りいれてもらえたら、とのことでした。

────その藁谷さんらしさのルーツは、どこにあるのでしょうか。

藁谷:祖母は無類の編み物好き、母も洋裁に凝っていたので、二人が作ったものをよく身に着けていました。手の届くところに洋裁の本があって、それを眺めるのも好きでしたね。当時見た本の中に載っていた洋服や幼い頃の自分が着ていた洋服が、自分にとってのファッションの原風景といえるかもしれません。

現在も夫が古着店を営んでいるということもあり、昔も今も文字通り洋服に囲まれた生活。現在までに積み重なってきた記憶や思いが、自分自身のデザインの中から滲み出ている……という感じかもしれません。意識してやっていることではないんです。

「HAU」は「BLANKET」の延長線上にあるブランドなので、大熊さんからリクエストいただいた「チロルっぽいロマンティックさ」も自然に醸し出されるのでは、と思います。

 

「ちょうどいいもの」をつくる。

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────「日常の中で感じる非日常感」というコンセプトについて、もう少しお話を聞かせてください。ある程度年を重ねてくると、突然服の趣味が変わったりすることはあまりないじゃないですか。でも洋服というものに対して、着ることで新鮮な気持ちになったり、気分が上がるものであって欲しいという期待感もあるんです。

藁谷:そうですよね。「HAU」の洋服を着ることで、少しの高揚感と背筋が伸びる感覚を感じてもらえたらと思っています。ちょっと嬉しい、とか、なんだか外に出たくなるな、とか。そのために、「今」というキーワードは大切にしています。カジュアルでシンプルだけど、シルエットやサイズ、丈に関しては今の気分や流行をさりげなく取り入れる。

春夏の商品はコットンやリネンでつくったものが中心なのですが、両方ともシワになりやすい素材なので一歩間違えるとだらしない印象になりがちです。そうならないために「HAU」のテーマでもある"きちんとしたカジュアル″を実現するためのさじ加減を考えるわけなのですが、その時間が悩ましくもあり、同時にとても楽しいひと時でもあります。

────立ち上げの準備に入るまでの2年間は、完全に一人の消費者として服に接したそうですね。

藁谷:はい。その時にいろいろなものがそぎ落とされたというか、純粋な気持ちで洋服に対峙することができました。子育ての傍ら、時間もあったので、高級店からファストファッションまでたくさんの洋服を見る機会がありました。

その中で、「あ……惜しい!」とか「ちょうどいいものがないな」と思うことが何度かあったんです。そういう気持ちが、新たにブランドを立ち上げる原動力になりました。なので「HAU」では、単純に自分が着たいものを作っているといっても過言ではないかもしれません(笑)。仕事としての洋服から離れた2年間は、デザイナーとしての自分にとっても有意義で意味のある時間でした。

────そういう気持ちが原動力になっているものづくりって、すごく健康的ですよね。生活者としての視点が反映されている服は、よく働いてくれそうな気がします(笑)。

藁谷:「あれ、なんか私、いい感じ!」って思わせてくれる服って、おのずと出番が多くなりますよね。いつもよりスタイル良く見えるとか、顔うつりがいい、とか。あとは、小さいことかもしれませんが自分で洗濯できるとか、乾いたらアイロンなしでもピシッと決まる、とか。

高価な服だから扱いにくいということはありませんし、逆にファストファッションでも、作り手の努力によって高価な服と同じくらいのパフォーマンスを発揮するものもある。いろいろな洋服を見てきて、それぞれの良さを知っているからこそ実現できる、今の自分が「良い」と思う洋服づくりの在り方を模索していけたらと思っています。

 

「HAU」という名前に込めた想い

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昨年10月に行った展示会の様子。Instagram @hau_clothes より

────ブランド名である「HAU」は、ポリネシア諸語のひとつであるマオリ語で、「風、呼吸、生命力」などを意味する言葉だそうですね。

藁谷:他にもいくつか候補はあったんです。「日常」を連想させる言葉をブランド名に入れたかったので、例えば「day to day」とか……。ただ、ある日大熊さんから「直接的な意味を持つ言葉ではなく、素敵な響きやニュアンスを感じる言葉をブランド名にする方がいいのでは」というアドバイスをいただきました。なるほど! と思いましたね。

そんなやり取りを重ねる中でご提案をいただいた「HAU」という言葉が、とてもしっくりきたんです。

風って当たり前に吹いているものですが、強風もあればそよ風もあるし、その日その日で表情が違う。「HAU」を始めるにあたり、大切にしたいと思っていたキーワードである「日常」や「今」とも繋がるな、と思いました。言葉の響きも心地いいですし。「HAU」の服を着ていると、「あの人、そよ風みたいに気持ちのいい人だよね」と言ってもらえるようになったらいいですね。

────確かに。自分にとっての「日常」や「今」って、日々アップデートしていきますものね。

藁谷:服だけではなく暮らしも楽しんでいる、そんな人をイメージしてデザインしています。カジュアルな日常着選びは大人になるほど難しい、という話を時々耳にしますが、確かに、悪い意味で「ユルく」しようと思えばいくらでも……(笑)。でもとらえ方によっては、日常着の着こなしを考える時間を暮らしの一部として楽しめたら、毎日はもっと楽しい。なりたい自分になれる、あるいは気分を上げるための道具として「HAU」の服が存在できればいいなと思います。洋服も、楽しい毎日の一部でありますように。そんな思いを込めて、新たな服作りを進めています。

> 後編へつづきます。

<HAUの取扱い店舗に関して>
CLASKA Gallery & Shop "DO" 各店、および全国各地のセレクトショップにて2月上旬より順次展開予定。CLASKA ONLINE SHOP でも全ラインナップ展開します。(2月15日より順次発売予定)

卸販売に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。
hau_clothes@claska.com

2019年2月2日 公開

インタビュー・文:落合真林子(CLASKA)
インタビュー撮影:速水真理(CLASKA)