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CLASKA Restaurant "kiokuh" シェフ 湯澤秀充の

今夜飲みたい日本ワイン、一緒に食べたいこの3皿

日本の四季折々の味覚を盛り込んだ軽やかで美しい
フレンチベースの料理を楽しめる CLASKA Restaurant "kiokuh"(キオク)。
季節ごとに変わるコース料理が好評ですが、実はアラカルトも精鋭揃い。
そして、ワインセラーにはマニア垂涎の日本ワインがずらり。
本連載では、毎回1本の日本ワインをチョイスし、
共に味わいたいアラカルト料理3品をご紹介。
kiokuh のツウな楽しみ方、提案します。

 

第23回:渋み×爽やかさ 山梨発・白ワインの新たな可能性

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今回のワイン

「ジャロピー 2019」(ドメーヌ ポンコツ)/山梨県

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Profile
CLASKA Restaurant "kiokuh" シェフ
湯澤秀充(ゆざわ・ひでみつ)


1981年東京都生まれ。料理学校を卒業後、都内でフランス料理とスペイン料理を学び26歳で単身渡仏。ミシュラン1つ星 "Le Jardin des Remparts" にて外国人初となる肉料理のセクションシェフを務める傍ら、デザートやパンなども手掛ける。2年間をブルゴーニュ地方で過ごした後帰国。ミシュラン2つ星の銀座 "Beige Alain Ducasse Tokyo" を経て CLASKA 料理長に就任。2016年、料理人コンペティション「RED U-35」にてシルバーエッグ入選。

CLASKA Restaurant "kiokuh"

シェフ 湯澤秀充による、日本の四季折々の味覚を盛り込んだフレンチベースの軽やかで美しいお料理をご提供します。毎朝7:30からのブレックファストに始まりディナータイムまで、時間帯に応じたメニューをご用意。コースメニューは、全7品6,000円+税、全5品のライトコース(4,000円+税)も。

今回の料理

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前菜:「鱧 グリーントマト 青みかん」/2,000円+税

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魚料理:「秋鮭のエスカロップ ベルモットのソース」/2,600円+税

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肉料理:「仔豚のバロティーヌ シルクスイート」/4,800円+税



※写真の料理はすべて2名分となります。
 

直球から変化球まで
あらゆる球を受け止める オールラウンダーなワイン

─────今回のワインは山梨県のドメーヌ ポンコツ「ジャロピー 2019」。これまでにも度々山梨のワインを選んでいただいていますが、今回はどんなワインでしょうか。

湯澤:ドメーヌ ポンコツは、静岡にある中伊豆ワイナリーで長年醸造に携わっていた醸造家が手掛けるブランドで、山梨の農業組合が設立した「中原ワイナリー」という醸造所で醸造されています。そこに属しているいくつかのブランドが共同で使っている醸造所、と言うと分かりやすいでしょうか。このワインは、白ブドウを使って赤ワインの製法で作った、いわゆる "オレンジワイン" です。

────オレンジワインは、ここ数年ですっかり浸透しましたよね。オレンジワインと言うと様々な料理に合うオールラウンダーというイメージがありますが......。

湯澤:醸造の際、赤ワインのようにブドウの皮も一緒に仕込むことで、皮の渋みやタンニン、旨味も抽出され複雑な味わいのワインに仕上がるので、様々な料理に合わせやすいですね。特にこのワインはしっかりとタンニンがあるのですが、品種がデラウェアなので苦みは爽やか。オレンジの皮や生姜、スパイスのような香りもあって余韻はすっきりとしています。

─────料理との組み合わせがたのしみです!さて、一皿目の前菜は何でしょうか。

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湯澤:「鱧 グリーントマト 青みかん」です。夏が旬というイメージの強い鱧ですが、夏と、秋から冬にかけて二度の旬があり、この時期の鱧は夏よりも脂が乗って旨味も増してきます。この料理ではさらに動物性の脂を足してあげるイメージで、鱧に塩漬けにした豚の背脂を薄くスライスしたものを巻いています。

────この歯ごたえのある食感は背脂なんですね!鱧と言うと淡白な印象がありますが、背脂のコクと旨味がプラスされて、見た目に反してしっかりとした味わいですね。この料理に普通の白ワインでは物足りなさを感じてしまいそう......。

湯澤:オレンジワインは、赤ワインの作り方をした白ワインと言われているだけあって、しっかりとした魚料理も得意としています。また脂には、タンニンの、収れん作用と呼ばれる舌がキュッと引き締まるような感覚をごまかしてくれる効果があるので、成分としても理にかなっているんです。

────とろみのあるソースも旨味があってとても美味しいです。少しエスニックのような酸味が感じられる気がしますが......。

湯澤:ソースは、鶏のコンソメに北海道厚岸のアサリの出汁を合わせ、葛で優しくとろみを付けたものにハラペーニョの酢漬けを少し加えているので、酸味の秘密はそれですね。付け合わせにはアサリのほか、青みかん、塩とグラニュー糖でマリネしたグリーントマトを合わせ、青みのある香りや酸味が感じられる食材をメインに構成しました。

────旨味のある鱧とアサリの身、さっぱりとしたグリーントマトと青みかんのバランス感がいいですね。タンニンがありつつもすっきりとした清涼感が感じられるワインが、青っぽさのある付け合わせにすごくマッチしています。

湯澤:ミントやカテキン、瓜系の皮のような爽やかさもあるワインなので、青みかんやグリーントマトの青い香りを合わせています。青みかんは、酸味の強いライムなどの柑橘とは異なり、みかんらしい芳醇な香りもあるので、デラウェアの果実味も感じられるこのワインはぴったりですね。

────前菜とは思えない満足感のある一皿でとても美味しかったです。

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湯澤:では次の魚料理を。「秋鮭のエスカロップ ベルモットのソース」です。エスカロップというのは、フランス語でそぎ切りのこと。トロワグロというフランスの偉大な料理人が作った「サーモンのエスカロップ」というクラシカルな料理があるのですが、それをイメージした一皿です。

────さっそくいただきます。......食材がゴロゴロとして食べ応えのあるソースが美味しいですね!とても濃厚で豊かな風味のあるソースですが、これがベルモットでしょうか?

湯澤:ベルモットは、ハーブで香り付けした白ワインで、煮詰めると少し甘みが出ます。ベルモットにエシャロットや白身魚の出汁、生クリームを加えながら都度煮詰めていき、濾したものを塩コショウとレモンジュースで味を調え、パセリ、ディル、エストラゴを刻んだものを加えます。仕上げに蒸した秋鮭の白子を刻んだもの、マッシュルーム、バターを加えました。このソースをたっぷりと秋鮭にかけたあと、イクラとホワイトセロリの葉を散らしています。

────マッシュルームの歯ごたえとイクラのプチプチ、白子のとろっとした食感のバランスがたまりませんね!トロワグロの「エスカロップ」にも、同じソースを添えるのでしょうか?

湯澤:トロワグロの「エスカロップ」は、オゼイユという酸味のあるハーブを入れた白ワインベースのソースを添えています。白ワインをベースに、酸味を足したという方向性は同じですね。

────先程の料理で『オレンジワインはしっかりとした魚料理が得意』とおっしゃっていましたが、この料理もまさしく、ですね。

湯澤:食材の色とワインの色を合わせるというのは、ペアリングのひとつの目安。ここではサーモンの身の色とワインのオレンジ色を合わせています。ソースにもクリームやバターを使っているので、爽やかすぎる白ワインよりも旨味のあるワインがしっくりきます。

────食べ応えがあって油分もあるクリーミーなソースと、タンニンの効いたワインが合いますね!少し薄めにスライスされた秋鮭とのバランスもいいですね。

湯澤:鮭は大きいブロックでしっかり焼いてしまうと外側がパサついてしまう魚。薄くそぎ切りにすることでパサつきを防げるだけでなく、たっぷりとソースをかけてしっとりと食べやすくしています。

────日に日に寒くなっていく今の時期にぴったりの、温かみのある一皿でした!

湯澤:それでは最後の肉料理をどうぞ。「仔豚のバロティーヌ シルクスイート」です。

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────ブロック肉かと思っていましたが、テリーヌのように様々な部位が混ざっているような......。これがバロティーヌですか?

湯澤:バロティーヌは、開いた肉に詰め物をして筒状に巻き、火を入れた料理の総称で、一般的にそのような料理はバロティーヌやガランティーヌと呼ばれています。これは、柔らかく茹でて細かく刻んだ仔豚の手足や頭、皮や首の肉のミンチを合わせたものを一枚に開いた肉で巻き、さらに網脂で巻いて筒状にしたものを火入れして一度冷やします。ここまでは仕込み段階で、オーダーが入ってからこれをカットして焼いています。その後フランスのブーダンノワールのパテの薄切りを被せ、オーブンでブーダンノワールを温めるように焼きました。

────聞いただけで気が遠くなりそうなほど手が込んでいるんですね!筋のような肉質やゼラチン質など、どこを食べるかで食感や味わいが変わる楽しさがありますね。様々な部位が含まれているのに、臭みは全くないのにも驚きました。

湯澤:丁寧に刻むというよりは、ザクザクと大小に差を付けて食べ応えに変化が出るようにしています。この仔豚はスペインの乳飲み仔豚で、ミルクだけを飲んで育っているため臭みがなく身も柔らか。一頭を丸ごと使った料理なので、小ぶりのサイズで扱いやすいというのもありますね。

────ブーダンノワールは、確か豚の血の腸詰でしたよね。この一品で豚一頭が完結しているんですね。

湯澤:豚の血と背脂、炒めた玉ねぎやスパイスを腸に詰めて茹でたのが一般的なブーダンノワールです。このブーダンノワールは腸には詰めず筒状の缶詰に入っているので、これをスライスしたものを被せています。骨と毛以外のすべての部位を使っていますね。

────お肉にすごく合っている、このソースについても教えてください。

湯澤:ソースはトリュフをベースに、マデラというポルトガルの甘みのあるワイン、フォアグラのペーストなどを加えて作っています。トリュフの土っぽい風味が感じられるかと思いますが、トリュフは、さつまいもなどの根菜と相性が良いので付け合わせのシルクスイートにも合うソースになっています。

────外はサクッと、中はとろっとした食感のシルクスイートもとても美味しいです!

湯澤:シルクスイートはねっとりしっとりした食感と上品な甘みが特徴の品種。柔らかく蒸したものを手でちぎり、外側がガリっとした食感になるくらいまでしっかりと揚げています。バロティーヌが複雑な工程を踏んでいるので、付け合わせまで複雑だと食べる方も疲れてしまうかなと思い、シルクスイートは揚げただけ、黒イチジクもオーブンで焼いただけと調理法はシンプルにしています。

────かなりしっかり、強さのある一皿なので、スパイスのような香りやタンニンもありつつ爽やかな味わいのワインがさっぱりとさせてくれますね。

湯澤:王道の組み合わせはやはり赤ワインですが、外した組み合わせも受け入れてくれるのがオレンジワインの良さですね。寒くなってくると食材の味も変化してくるので、こんな楽しみ方もいいかなと思わせてくれる組み合わせになっていると思います。

────2019年というフレッシュさのあるオレンジワインだからこそのバランス感ですね!オールラウンダーらしいオレンジワインを楽しめる3皿でした。ごちそうさまでした!

◎10月31日現在のアラカルトメニュー/日本ワインのリストはこちらから

アラカルトメニュー

>日本ワインのリスト(pdf)
白ワイン赤ワイン

CLASKA Restaurant "kiokuh"(キオク)

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所在地:東京都目黒区中央町1-3-18 CLASKA 1階
Tel:03-3719-8123
営業時間:7:30〜23:30/営業時間の変更のお知らせはこちら
Breakfast/7:30〜11:30(L.O. 11:00)
Lunch/11:30〜15:00(L.O. 14:30)
Tea Time/15:00〜17:30(L.O. 17:00)
Dinner/18:00〜23:30
(コースL.O. 21:00、アラカルトL.O. 22:00、ドリンクL.O. 23:00)
*17:30〜18:00 はクローズします。
店内終日禁煙/テラス席は常時喫煙可/WiFi 無料/ペット同伴可(テラス席、一部ソファ席のみ)ペットシーツとリードをご持参ください
※ディナー時は別途サービス料(10%)を頂戴します。
WEB予約はこちらから

2020年10月31日公開
取材・撮影:山本純子(CLASKA)

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