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CLASKA Restaurant "kiokuh" シェフ 湯澤秀充の

今夜飲みたい日本ワイン、一緒に食べたいこの3皿

日本の四季折々の味覚を盛り込んだ軽やかで美しい
フレンチベースの料理を楽しめる CLASKA Restaurant "kiokuh"(キオク)。
季節ごとに変わるコース料理が好評ですが、実はアラカルトも精鋭揃い。
そして、ワインセラーにはマニア垂涎の日本ワインがずらり。
本連載では、毎回1本の日本ワインをチョイスし、
共に味わいたいアラカルト料理3品を
アミューズ・前菜・メインのコース仕立てで紹介。
kiokuh のツウな楽しみ方、提案します。

 

第21回:夏から秋へ。季節の移ろいをピノ・ノワールとともに

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今回のワイン

「Pinot Noir 2017」(Funky Château)/長野

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Profile
CLASKA Restaurant "kiokuh" シェフ
湯澤秀充(ゆざわ・ひでみつ)


1981年東京都生まれ。料理学校を卒業後、都内でフランス料理とスペイン料理を学び26歳で単身渡仏。ミシュラン1つ星 "Le Jardin des Remparts" にて外国人初となる肉料理のセクションシェフを務める傍ら、デザートやパンなども手掛ける。2年間をブルゴーニュ地方で過ごした後帰国。ミシュラン2つ星の銀座 "Beige Alain Ducasse Tokyo" を経て CLASKA 料理長に就任。2016年、料理人コンペティション「RED U-35」にてシルバーエッグ入選。

CLASKA Restaurant "kiokuh"

シェフ 湯澤秀充による、日本の四季折々の味覚を盛り込んだフレンチベースの軽やかで美しいお料理をご提供します。毎朝7:30からのブレックファストに始まりディナータイムまで、時間帯に応じたメニューをご用意。コースメニューは、全7品6,000円+税、全5品のライトコース(4,000円+税)も。

今回の料理

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アミューズ:「ダビデの星のベニエ 自家製サルデッラ」/800円+税(2 pieces)

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前菜:「仔牛のヴィエノワーズ」/3,600円+税

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メイン:「スズキのブルギニオン」/3,400円+税



※写真の料理はすべて2名分となります。
 

料理を引き立てる、劇中音楽のようなワイン

─────今年の夏は毎日うだるような暑さの日が続きましたが、朝晩は少しずつ秋らしさも感じられるようになってきました。秋の気配とともに、ワインもよく冷えた白ワインやスパークリングワインから、赤ワインにシフトしたくなりますよね。

湯澤:今回のワインは長野県・Funky Château の「Pinot Noir 2017」。晩夏から初秋にぴったりな、エレガントでしっかりとした酸も感じられるピノ・ノワールを選びました。Funky Château のオーナーは、もともと映画や CM などの音楽プロデューサーとして音楽の仕事に携わりながら、ワイン好きが高じてご夫婦でワイナリーを立ち上げたという異色の経歴の持ち主。2008年にブドウの栽培を開始し2011年にワイナリー完成と、まだ設立してから10年に満たない気鋭のワイナリーで、自然発酵、無濾過、無清澄をコンセプトに土壌や気候を生かしたワイン作りを行っています。

────ワイナリー設立のエピソードだけでも、どんなワインなのか興味が湧きますね!音楽プロデューサーというだけで、センスのいい、こだわりの詰まったワインな気がしてしまいます......。

湯澤:自社農園のある土地とブドウの特性を生かしたワインを作るために、人の手や添加物を極力減らし、降雨量や日照時間もデータ化しているそうで、そんなところに音楽業界で養ったプロデュース能力が発揮されているのかもしれないですね。まずはひと口、召し上がってみてください。

─────心地よい酸味と果実味が、まだ暑さの残る今の時期にぴったりですね!赤ワインで秋を先取りしつつ、夏の終わりを惜しむような華やかさも感じられて......。

湯澤:赤ワインは、発酵の後に果実から果汁を絞り出す作業があるのですが、このワインはソフトプレスで搾汁しているので皮の渋みやタンニンが強く出過ぎず、雑味の少ないワインに仕上がっています。その後20ヶ月の樽熟成を行っているため、ピノ・ノワールらしい繊細さもありつつ、滑らかでリッチな味わいが特徴のワインですね。

─────尖った酸ではなく、樽熟成らしい丸みや奥行きもありますね。お料理との組み合わせが楽しみです!

湯澤:では、一皿目のアミューズを。「ダビデの星のベニエ 自家製サルデッラ」です。

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────カリッとした衣とオクラの歯触りがいいですね!噛むごとにオクラの粘りが出てきて食感が変わっていくのもたのしいですね。

湯澤:フランスでは衣をつけて揚げた料理を「ベニエ」と呼ぶのですが、今回は「ダビデの星」という大振りのオクラをベニエにしました。もともと生でも食べることができる実の柔らかいオクラですが、じっくり火を通してあげると、オクラ特有のシャキシャキ感を残しつつ粘りが凝縮して食べ応えが出るんです。

────揚げ物らしい満足感がありますよね!そこに塩辛のようなピリっとした辛みが効いて食欲を刺激してくれます。

湯澤:上に乗せているペーストは、サルデッラというイタリアのサルデニア島の発酵食です。生シラスや魚の稚魚を唐辛子と合わせて発酵させるのですが、これは発酵させてからまだひと月半くらい。地元では生シラスの時期になると各家庭で大量に仕込むのだそうです。

────塩辛のような辛さ、と感じたのは生シラスの旨味だったんですね。イタリアではこのペーストを料理に使ったりするんですか?

湯澤:パスタソースに加えたり、トーストに乗せて食べたりしますね。今回のベニエも、カリカリに焼いたバゲットにサルデッラを乗せるイメージで作りました。

────確かに、衣の食感はサクッというよりカリッですよね。

湯澤:衣は小麦粉、コーンスターチ、ベーキングパウダーにビールを加えていて、ビールの炭酸を利用してカリッとした歯ごたえに仕上げています。揚げ物らしい満足感のある食べ応えにすることで、酸度の高いワインにマッチするんです。

────オクラの粘りとサルデッラのねっとり感も、酸味によってキリっと引き締まってとても美味しかったです!

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湯澤:それでは次の前菜をどうぞ。「仔牛のヴィエノワーズ」です。

────仔牛のピンク色が美しいですね!それでは早速いただきます......。しっとりとした仔牛と滑らかなソースの質感がなんとも上品です。

湯澤:「ヴィエノワーズ」はウィーン風という意味で、元々は薄切りにした仔牛や白身の魚にパン粉を付けて焼き、茹で卵やケッパー、パセリを添えて食べるフランスの伝統料理です。卵やレモンジュース、ケッパー、グリーンオリーブなどをミキサーにかけ、そこに焦がしバターを加えて乳化させ、ガスを加えてムース状にしたソースを、厚く切った仔牛のロースに添えました。

────クルトンや茹で卵を散らしたソースで「ヴィエノワーズ」が再現されているんですね!

湯澤:クルトンは食感を出すために、目の詰まった自家製の食パンを焼いています。これをさいの目に切り、焦がしバターでしっかりと焼き上げています。

────焦がしバターの豊かな香りのおかげでワインが進みますね!

湯澤:仔牛はオーブンで温度を上げた後、休ませながら余熱で火を入れているのですが、最後の仕上げにはフライパンでバターを絡めています。仔牛は牛肉特有の癖が少ないのでタンニンを抑えたピノ・ノワールが合うのですが、樽熟成されたリッチな味わいもあるワインなので、バターを使ったソースとの相性もいいですね。

────料理とワインが互いの良さを引き立て合っていますよね。すごく表情豊かなワインなので、メインではどんなマリアージュを見せてくれるのか楽しみです!

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湯澤:最後のメイン「スズキのブルギニオン」です。

────秋らしさを感じさせる一皿ですね。スズキの上に乗っているのは......お肉ですか?

湯澤:僕がフランスにいたときの師匠の料理なのですが、当時、魚と肉を合わせるという発想に度肝を抜かれたんですよね。「ブルギニオン」はブルゴーニュ風、いわゆる赤ワイン煮で、師匠は牛のもも肉を赤ワインで煮てほぐしたものをスズキに合わせていたのですが、今回は北海道の豊西牛のほほ肉を使ってアレンジしました。

────スズキと牛ほほ肉が違和感なく調和していてバランスが絶妙だな、と思ったのですが、喧嘩しないための工夫はありますか?

湯澤:日本で赤ワイン煮というと、たっぷりの野菜をしっかり炒めて甘みを出して......と、ビーフシチューのような仕立てにすることが多いですが、今回は魚にも合うようさらっとしたソース仕立てに。赤ワインの香りや酸味も残してフレッシュさを感じられるようにしています。

────赤ワイン煮のようなとろみやしつこさがない分、スズキのふわふわの食感が生きていますよね。

湯澤:スズキは蒸してふわっとした食感に仕上げました。スズキは汽水魚といって、河口付近の淡水と海水が混ざり合う水域に生息する魚で、淡水魚ほどではないにしろ川魚のような匂いがすることがあるんです。淡水魚は、日本では匂いを消すために洗いにしたり味噌で煮たりするのですが、フランスでも鰻を赤ワインで煮込む料理があったりする。当時はどうしてスズキなのか考えたこともなかったのですが、汽水魚だからこその仕立てだったのかなぁと今となっては思いますね。

────白身魚にもかかわらず赤ワインとの相性が良いのには、ちゃんと理由があるんですね。

湯澤:牛肉のブルゴーニュ風と呼ばれる料理には、赤ワインで煮た牛肉に玉ねぎやパセリ、マッシュルームが添えられます。今回は、蒸したスズキに薄くスライスしたほほ肉を乗せてソースをかけ、サマートリュフとマッシュルーム、オニオンリングと素揚げしたイタリアンパセリを乗せています。熟成したピノ・ノワールにはきのこの土っぽい香りが合うので、ブルゴーニュ風の秋らしい料理にはぴったり。そもそもピノ・ノワールが、ブルゴーニュ地方を代表する品種ですからね。

────このワインの料理に彩りを添えるエレガントな味わいは、映像作品を引き立てる劇中音楽にも通じるものがある気がしました。樽熟成らしいふくよかさも感じられるワインなので、秋が深まった頃にはまた違った楽しみ方が出来そうですね。ごちそうさまでした!

◎8月31日現在のアラカルトメニュー/日本ワインのリストはこちらから

アラカルトメニュー

>日本ワインのリスト(pdf)
白ワイン赤ワイン

CLASKA Restaurant "kiokuh"(キオク)

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所在地:東京都目黒区中央町1-3-18 CLASKA 1階
Tel:03-3719-8123
営業時間:7:30〜23:30/営業時間の変更のお知らせはこちら
Breakfast/7:30〜11:30(L.O. 11:00)
Lunch/11:30〜15:00(L.O. 14:30)
Tea Time/15:00〜17:30(L.O. 17:00)
Dinner/18:00〜23:30
(コースL.O. 21:00、アラカルトL.O. 22:00、ドリンクL.O. 23:00)
*17:30〜18:00 はクローズします。
店内終日禁煙/テラス席は常時喫煙可/WiFi 無料/ペット同伴可(テラス席、一部ソファ席のみ)ペットシーツとリードをご持参ください
※ディナー時は別途サービス料(10%)を頂戴します。
WEB予約はこちらから

2020年8月31日公開
取材・撮影:山本純子(CLASKA)

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