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CLASKA Restaurant "kiokuh" シェフ 湯澤秀充の

今夜飲みたい日本ワイン、一緒に食べたいこの3皿

日本の四季折々の味覚を盛り込んだ軽やかで美しい
フレンチベースの料理を楽しめる CLASKA Restaurant "kiokuh"(キオク)。
季節ごとに変わるコース料理が好評ですが、実はアラカルトも精鋭揃い。
そして、ワインセラーにはマニア垂涎の日本ワインがずらり。
本連載では、毎回1本の日本ワインをチョイスし、
共に味わいたいアラカルト料理3品を
アミューズ・前菜・メインのコース仕立てで紹介。
kiokuh のツウな楽しみ方、提案します。

 

第4回:自由なワイン、自由な料理。

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今回のワイン

「K18 FY DD」 (共栄堂)/山梨県

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Profile
CLASKA Restaurant "kiokuh" シェフ
湯澤秀充(ゆざわ・ひでみつ)


1981年東京都生まれ。料理学校を卒業後、都内でフランス料理とスペイン料理を学び26歳で単身渡仏。ミシュラン1つ星 "Le Jardin des Remparts" にて外国人初となる肉料理のセクションシェフを務める傍ら、デザートやパンなども手掛ける。2年間をブルゴーニュ地方で過ごした後帰国。ミシュラン2つ星の銀座 "Beige Alain Ducasse Tokyo" を経て CLASKA 料理長に就任。2016年、料理人コンペティション「RED U-35」にてシルバーエッグ入選。

CLASKA Restaurant "kiokuh"

シェフ 湯澤秀充による、日本の四季折々の味覚を盛り込んだフレンチベースの軽やかで美しいお料理をご提供します。毎朝7:30からのブレックファストに始まりディナータイムまで、時間帯に応じたメニューをご用意。コースメニューは、全7品6,000円+税、全5品のライトコース(4,000円+税)も。

今回の料理

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アミューズ:「マコモタケのカルボナーラ仕立て」/1,200円+税

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前菜:「ソフトシェルクラブのピペラード」/2,000円+税

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メイン:「熟成豚のロースト いしりバターを絡めた春野菜」/2,400円+税

※今回ご紹介したお料理に関しては、いずれも2名でシェアしていただける量となります。

無所属ゆえの懐の深さ。オレンジワインの可能性

────今回のワインは「K18 FY DD」。なんだか、暗号のような不思議な名前ですね。

湯澤:山梨県の「四恩醸造」の醸造・販売責任者だった小林剛士さんが四恩醸造を退社後、独立してはじめた「共栄堂」のワインです。小林さんは、日本のナチュールワインのつくり手としてよく名前が挙がる方でもありますね。

────とても綺麗な色のワインですね。

湯澤:白ブドウを原料に、赤ワインの製法を用いてつくられた「オレンジワイン」です。ブドウの皮や種も一緒に仕込むことで、皮由来の香りや渋味を伴った複雑な味わいになります。今までは、ちょっとつくりかたが違う白ワイン、という感じで特にジャンル分けはされていなかったと思うのですが、ここ数年で注目度が上がり、いまや一つのジャンルとして確立された感がありますね。

────楽しみです。さて、今回の1皿目はなんでしょうか?

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湯澤:「マコモタケのカルボナーラ仕立て」です。マコモタケというイネ科の植物の根元部分をスライスして麺状に切ったものを蒸してから、塩とオリーブオイルで味付けをしました。これ、本物のパスタみたいに見えませんか?(笑)

────そう錯覚しちゃいますよね。まるで、平打ち麺のような。

湯澤:このマコモタケの上に卵とチーズ、黒こしょうの塩漬けをのせて、生クリームと合わせて煮詰めたチーズソースを絡めています。仕上げには、すりおろしたパルミジャーノを。

────面白い! 早速いただきます。これは……さぞかし濃厚な味わいかと思いきや、マコモタケのさっぱりとした口当たりもあって、意外にも爽やかな後味ですね。これは何料理といえばいいのでしょうか(笑)。カルボナーラだけど、どこか和の要素も感じるというか。

湯澤:ワインも一緒にどうぞ。酸がしっかり感じられながらも、同時にメロンやバナナといったトロピカルな味わい、それから白コショウのニュアンスも感じるワインです。これからの温かい時期に、エスニックな料理と一緒に飲みたい一本ですね。

────いただきます。……軽い口当たりですが、結構飲みごたえもありますね。マコモタケをツマミにしながら、いくらでも飲めちゃいそうな感じです。

湯澤:そうでしょう。“白でもないし赤でもない”というある種の「無所属感」が、このワインの魅力の一つだと思います。実は、今回のワインと料理の組み合わせを考える際のテーマにもなったのですが。

────先ほど「エスニック料理と」というお話が出ましたが、他に、このワインと相性がいい料理の傾向はありますか? 

湯澤:オレンジワインは、酸がしっかりあって苦味も持ち合わせているので、動物性の脂と相性が良い気がします。たとえば、菜の花のように苦味がある素材をバターでソテーすると綺麗に味がまとまるのですが、それと同じ考え方ですね。

────なるほど。さて次の料理、前菜は何でしょうか。

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湯澤:「ソフトシェルクラブのピペラード」です。クミンとパプリカパウダー、それからニンニクパウダーを混ぜてスパイシーな味付けにしたソフトシェルクラブを一度揚げて、赤玉葱と赤パプリカ、トマト、そしてココナッツミルクを加えて煮たものです。それを、半熟卵でとじました。上に散らした葉は、コリアンダーの新芽です。

────見た目も、使っている素材もエスニック感が強いですね。どんな味なんでしょう。ピペラードは、フランス南西部にあるバスク地方の伝統料理ですよね?

湯澤:そうですね。まさにその料理にインスパイアされてつくった料理なのですが、実はもう一つエピソードがありまして。僕が好きなタイ料理で「プー・パッ・ポン・カリー」というものがあるのですが……。

────蟹をカレー粉で炒めたような料理でしたっけ?

湯澤:はい。シンプルに言えば、“蟹の卵とじ炒め”という感じでしょうか。一方、これまた大好物のバスク料理の「ピペラード」なのですが、こちらは玉葱と赤ピーマン、赤パプリカ、トマトを煮込んで、最終的に溶き卵でとじる。

────あれ? なんか似ていますね(笑)

湯澤:そうなんです。それに気が付いてしまって(笑)。この発見から生まれた料理なんです。

────いただきます。……エスニックな味わいですけど、どこかまろやかで優しい味わいですね。ワインとの相性もばっちりです。料理のスパイシーさとワインのトロピカルな味わいが、実にしっくりきますね。

湯澤:まろやかさは、ココナッツミルク効果ですね。ちなみにこのワインは、時間が経って温度があがってくるとナッツ感がより際立ってきます。

────するすると飲めるんですけど、いい意味でのクセもありますよね。

湯澤:そうですね。価格もリーズナブルなワインですけど、“がぶ飲み”はしたくない、かといって一本に真剣に向き合って背筋を伸ばして飲むワインかといえば、そうでもない気がします。絶妙な立ち位置ですね。

────まさに、今回のテーマでもある「無所属感」を纏ったワインということでしょうか(笑)。さて、最後のメイン料理はなんでしょう?

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湯澤:「熟成豚のロースト いしりバターを絡めた春野菜」です。豚肉は三重県の「幻泉豚」で、1ヶ月熟成させたものをシンプルに塩で焼きました。春野菜に絡めてあるソースは「いしりバターソース」です。「いしり」というのは、能登で作られる魚醬で、今回使用しているのはメギスという魚で作ったいしりです。少しのニンニクと白ワインたっぷりのバターで乳化させています。熟成させた豚に、熟成させた調味料。熟成繋がり、ということで。

────豚肉の脂って、甘くて美味しいですよね……。

湯澤:先ほど「オレンジワインと動物性の脂は相性が良い」という話をしましたが、それを体験できるのがこの料理です。豚肉は、特にオレンジワインとの相性がいいと思います。中華料理の酢豚を想像していただくとわかると思うのですが、ナッツやパイナップルと豚肉って良く合いますよね? 

────確かに。ワインとの相性、ばっちりです。先ほどまでよりも、トロピカルなニュアンスが際立ってきましたね。マコモタケのカルボナーラからはじまって、バスクとタイの競演、そして国産豚とフランスの伝統的なソースのコンビネーション。今回の3皿は、無国籍感が強かったですね。今回の料理すべてに共通することって、何かありますか?

湯澤:一緒に飲みたいワインが、「白ワインじゃないけど、赤でもないな」というところでしょうか。もし白を合わせるとしたらしっかりしたものが良いし、赤だったら少し軽めのものが良い。でも、それは絶対ではないというか。

────どっちつかずな(笑)。でもある意味、自由度が高いともとれますね。

湯澤:今回の紹介したワイン「K18 FY DD」も、カテゴリで括りきれないところが魅力。飲むとわかると思うのですが、捉われなさ、自由さを感じるワインです。自由にはワインは自由な料理を、という感じでしょうか。

────“どっちつかず”は一つの魅力でもあるかもしれませんね。ワインと料理の組み合わせで言えば、「肉には赤、魚には白」という時代でもない気がしますし。オレンジワインの可能性と懐の深さを実感しました。ごちそうさまでした!

◎4月24日現在のアラカルトメニュー/日本ワインのリストはこちらから

アラカルトメニュー

>日本ワインのリスト(pdf)
白ワイン赤ワイン

CLASKA Restaurant "kiokuh"(キオク)

kiokuh

所在地:東京都目黒区中央町1-3-18 CLASKA 1階
Tel:03-3719-8123
営業時間:7:30〜23:30/営業時間の変更のお知らせはこちら
Breakfast/7:30〜11:30(L.O. 11:00)
Lunch/11:30〜15:00(L.O. 14:30)
Tea Time/15:00〜17:30(L.O. 17:00)
Dinner/18:00〜23:30
(コースL.O. 21:00、アラカルトL.O. 22:00、ドリンクL.O. 23:00)
*17:30〜18:00 はクローズします。
店内終日禁煙/テラス席は常時喫煙可/WiFi 無料/ペット同伴可(テラス席、一部ソファ席のみ)ペットシーツとリードをご持参ください
※ディナー時は別途サービス料(10%)を頂戴します。
WEB予約はこちらから

2019年4月24日公開
編集・取材・文:落合真林子(CLASKA)
撮影:速水真理(CLASKA)