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堀井和子さん、テーブルクロスについて教えてください。

CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店で2015年末に開催した堀井和子さんの企画展、「TREE + こんなツリーがあったら こんな格子柄があったら」。堀井さんがフリーハンドで描かれた「格子柄」と「鳥と太陽とアーティチョーク柄」を元にオリジナルのテキスタイルを制作、テーブルクロスなどの商品化が実現しました。

あらためて、それぞれの魅力的な絵柄を着想された経緯や、テーブルクロスに合わせたい器のイメージなど、ぜひ堀井さんご自身から教えていただけたら!と、堀井さんがご主人と構える「1丁目ほりい事務所」兼ご自宅を訪ねました。

「格子柄」のテキスタイルのこと。

― 企画展のタイトルにもなった、「こんな格子柄があったら」。堀井さんがフリーハンドで描かれた格子のピースが元になり、柄ができました。

日本の型染めや海外のヴィンテージのテキスタイルで出合える格子やストライプ柄の中でも自分が魅力的だと感じるデザインは、手描きのものが多いと気づいたんです。それで自分の手で格子の“破片”(1ピース分の原画)を描きましたが、それをどのように繰り返して使うかに関しては、福島さん(CLASKA Gallery & Shop "DO" デザイナー)がレイアウトしてくださったものを一緒に見て相談しながら決めて、気に入ったものが出来ました。

― 原画と完成したテキスタイルを見比べると、格子の上下に、原画よりも間隔(余白)があります。

この白い部分を持たせたことと、幅が効いていますよね。逆に白の分量が多すぎるとシミや汚れが目立ったり、汚さないようにと緊張してしまったりするものですが、この格子柄は、白とグレーのコントラストと割合がほんとうにちょうどいい。汚れが目立たず、緊張せずに使えます。

(例えば、このテーブルクロスでの朝食と、和食のときの風景。堀井さんが器を置いて見せてくださいました。)

格子柄のテーブルクロスを実際に使ってみると、器とも組み合わせやすくて。手前味噌ですが、すごくうれしいです。物をデザインしたり企画したりすること自体よりも、自分が「こういう物があったらいいな」と思い描いた物を作って実際に使ってみたら、暮らしの中で活き活きしてくれたこと。これが、いちばん、うれしいですね。

― 洋食も和食も映える。絶妙な柄です。

毎日の食事の際、席の位置も決まっていれば、案外と狭い視界(テーブルクロスの中でも、同じ一角を見続けること)になってしまうもの。自分は道具を使って引かれた線よりもフリーハンドの線にくつろぎを感じることもあって、今回の格子柄は日々、穏やかな気分で眺めることができています。のどかな線のせいか、飽きないですね。

それに、昔のテキスタイルは、時間が経つとちょうどいいマットな感じに色褪せてくれていたのですが、最近は染織やプリント技術が進化して、いくら洗ってもいい具合に褪めることが無くなってきたように感じます。このテーブルクロスは、墨色に近い濃いグレーでプリントをお願いしました。

格子柄は特に、プロダクトによって見え方が変わる面白さが出ましたよね。格子の、どこを切り取ったか。その画面やプロダクトのサイズによって印象が大きく違うという、意外な楽しさも発見できました。

― カードケースやブックカバーといった小さな物だけでなく、バッグなどでもそれぞれ違いがあり、表裏どちらの面を見せるかでも印象が変わって楽しめます。

「鳥と太陽とアーティチョーク柄」のテキスタイルのこと。

― この柄には、びっくりしました。最初はインパクトを感じつつも、見続けるほどに朗らかで、しみじみとうれしく、元気をもらえます。

こういった絵柄を、これまで食器などにプリントすることはありましたが、いつか「テキスタイルにできたら」と思い描いていたのが実現できて、すごくうれしいです。夕食後の食器洗いは主人、朝食後の食器洗いは自分が担当と決まっているのですが、主人が洗うとき、この柄のエプロンを使っています。

「1色か2色刷りのテキスタイルで表現するには、どうすると面白いか?」ということから考え始めたのですが、そのときちょうど、3色ボールペンの中のブルーの発色が特に気に入っていて。そのブルーであちこちに落書きしては、リズミカルな見え方を楽しんでいたんです。

― この原画を見ると、先に黄色を配し、その上から青いボールペンで描かれていますね。

「TREE +」展のツリーに飾るオーナメントのアイディアを模索中に、鳥の形をガラスで作ろうとしたところ「きれいな鳥型に成形するのは難しい」と言われたため、「成形した後で上から鳥のアウトラインを入れたらどうかしら?」と。そのアイディアをこちらにミックスして、先に黄色、上から大好きな青のボールペンで、勢いで、わーっ!と描きました。

(堀井さんによる、ティータイムのテーブル。カフェオレボウルの縁の模様の青と、テーブルクロスに描かれたラインの青がリンクして。ガラスやトレイの輝きが明るい絵柄に映えて、とってもきれいです。)

もっと精密に描かれた柄は見ると思いますが、わたしは、ありそうでなかった、おおらかなタイプに挑戦してみたかったです。描く側ではなく見る側で言うと、アーティストや画家といった人たちの本職の作品よりも、彼らがふと装丁を手がけた本などの方が、どうも好きだったりするんです。

子どもが無心で描いた絵に心を動かされたり、(後から何度描き直しても結局)最初に描いた1枚がどうにも良かったり、不思議と見飽きなかったり。何だか夢中になって、子どものように描いた柄かも知れません。

1枚の布が空間を変える。テーブルクロスの魅力と楽しみ。

(著書『26枚のテーブルクロス―わが家のテキスタイルabc』を見せていただきながら、お話を伺いました。)

結婚してすぐに、この大きな木のダイニングテーブル(100×180cm)を買ったんです。若いときは賃貸住宅を転々としていて、テーブルの横を人1人がやっと通れるくらいの狭さだったこともあるのですが、テーブルクロスを掛けると、この天板面積なので一気に存在感が出て、ものすごく空間に影響すると知りました。

(北欧のシンプル・モダンで凛としたデザインのテキスタイル、南仏のリゾートのような気分の色鮮やかな織物など、ページをめくるたび・1枚のテーブルクロスが変わるだけで空間を見違えはっとさせられます。)

限られた空間の中で、テーブルクロスがもたらす効果に、好奇心をすごく刺激されたんです。しかも、200cm分ほどの布が1枚という、たったそのくらいの値段で大きな冒険ができる。食器との組み合わせも、合う物と合わない物と、実際に色々試してみないとわからないもので、それを繰り返すうちにどんどん面白くなってきました。

― 壁や床の仕上げを変えたりアートを飾るよりも手軽でいて、ドラマティックな空間効果。テーブルクロスの魅力の発見に溢れた、素敵なご本とクロスのコレクションですね。

染織家の方の展示会や新しいお店などに足を運んで魅力的なテキスタイルに出合っても、洋服にしたいとは思わず、つい「テーブルクロスにしたらどうなるか」を考えてしまいます。テーブルクロスは、今手元にあるだけでも4〜50枚でしょうか。

― テーブルクロスに向いているのは、どんなテキスタイルでしょうか。

色柄のコントラストが強すぎて目がチカチカしたり、白地の分量が多くて汚さないか緊張したりせず、穏やかにくつろげるもの。麻で薄地すぎるテーブルクロスなどはアイロンしても取れない皺ができてしまったりしますが、(今回作ったテーブルクロスは帆布で)皺になりにくい厚さ。格子柄はその点、ほんとうに使いやすいテーブルクロスですね。

― 日本人は欧米と比較するとテーブルクロスに馴染みがなく、汚してしまうと洗濯が大変など、億劫に感じる方も多いかも知れません。

テーブルクロスの上でランチョンマットやオーバークロス、お盆・トレイを使うといいですよ。スパゲッティなどソースが飛び散りやすい料理のときには濃い色のランチョンマットを敷いたり、和食のときは汁物のお椀の輪染みを避けるためお盆を使ったりしています。小さな布やお盆なら、汚れてもそれだけで洗いやすいですしね。テーブル上での組み合わせも楽しめます。

テーブルクロスを洗おうと以前クリーニング屋さんに出したら変に糊が効いて返って来て、今度はその糊を取るのが大変になったりしたことがありますので、洗濯は自宅で。うちではテーブルクロスとテーブルの間に不織布を敷いています。不織布の上でテーブルクロスを手で均すと、ずれにくく、平らに落ち着きますよ。

― テーブルクロスは、どういうときに替えられているのでしょうか。

この季節にはこの色、この柄と決めているクロスもありますが、組み合わせたいものを見つけると替えます。ファッションもそうだと思いますが、シーズン毎の好奇心と、コーディネートする面白さがありますよね。また、この食器だったら・・・と食事で考えるだけでなく、テーブルクロスの上に花を飾ったり、気に入ったアート本などをちょっと置くだけで、そのコーナーが「目を遣るとうれしいインテリア」に。

― 堀井さんが物を選ぶ・作るときに、ぶれない「目」を持ち続けてこられた秘訣をお伺いしてもいいでしょうか。

昔スタイリストをしていたときからの目でしょうか。たくさんの物を何気なく見ていても、好きなものはどこにあったどんなものか詳しく憶えていて、インプットになってきたようです。旅行先でもどこでも、気になるものを見つけてしまいます。物の色や形にワクワクを感じる好奇心は忘れないようにしたいです。嫌いなものを切り捨ててしまう分(笑)、とにかく"好き"の中で探す。そのうち、例え流行のファッションが紹介されていても「流行遅れと言われても、着たくないものは着ない」と思えるようになりました。好きじゃないものは選びませんし、例え実用的でなくても大好きなものは値段が高めでも買います。

ただし、失敗もしてきましたよ。「きれいだな」と気に入って買った唐津焼の器が、家に持って帰ったらどうにも合わず、実家に譲ったことも・・・。わたしが作る料理は家庭料理で盛り付けもざっくりと素直ですから、薄く繊細な器よりも多少おおらかな雰囲気がある器でないと、合わせるのが難しかったりもします。

なので、わたしは「この器が“いい器”、あるいは“おすすめ”」など、人に言うことができません。その物が自分の家に合うかどうかはすぐにわかっても、人の家に合うかどうかはわからない。食器と料理とテーブルクロスと・・・合わせてみないとわからないことも多いので、色々と試して自分なりのコツを掴むのが大事です。

(自分がスタイリストだから、ということはなく)暮らしている、誰もがお家のスタイリストだと思います。コーディネートを楽しむチャンスが、自宅に幾らでもある。その人だけの空間や物の選び方で、きっとスタイリングにも、ものすごいバリエーションが生まれているはず。素敵なことですよね。

「堀井和子さんのCrocodile & Stationery 展 ― 仕事机の上の仲間たち ワニと文房具」2011年 CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店

1丁目ほりい事務所の、ものづくりについて。

2010年に主人と「1丁目ほりい事務所」という形でスタートしましたが、そのあと東日本大震災が起きたり・・・。「何を1丁目ほりい事務所で作ったらいいのか?」を2人で話し合い、考えることからでした。この歳でスタートする会社ですから、若い方と違って、出来ること・出来ないことを見定める必要も。

その最初のころのメモや記録を見返したときに「叶いそうもないけれど、やってみたいこと」として、やはり、暮らす部屋の中のオブジェとして存在が面白いもの・ありそうでなかったもの・組み合わせたり、置く場所によっても楽しめるものを作りたい。その想いを確かめました。例えばアレクサンダー・カルダーのおもちゃやピカソのポスターのように、遊び心があって、「今、この暮らしを、少し面白くできるかな?」というものを、と。

「ガラス、テキスタイル、紙、木・・・ 組み合わせて使うテーブルの上のもの」展 2013年 CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店

「TREE + こんなツリーがあったら こんな格子柄があったら」2015年 CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店

― これまで5回の企画展をご一緒に開催し、今回初めてオリジナルのテキスタイルが実現しました。

「こういうテーブルクロスの上で食事をしたい」という夢を描いても、主人と2人の小さな規模で制作するには難しく、テキスタイルは扱ってもせいぜいトートバッグなどにプリントする程度でした。例えたくさん作れたとしても、自分たちでお店やギャラリーを構えて売ることは考えていませんでした。なので今回、「これまで叶わなかったことが叶った!」といううれしさがありますよ。

― 堀井さんが描かれたゾウの絵柄のマグカップとハンカチーフも作りました。

ブロックプリントのハンカチーフを作ろうというところから始まりましたが、この絵柄をマグカップにもしたいと言われたのは少々意外でした。でも、プロダクトに色出しするとイメージが違ってしまうことがよくあるところ、これらは色合いがシックに出て、うまくいったと思います。

(実は今後も、ゾウのモチーフの新たな展開予定や、企画展の計画が。1丁目ほりい事務所とCLASKA Gallery & Shop "DO" の取り組みに、ご期待いただければと思います。)

(テーブルクロスとお揃いの、格子柄のエプロンスカートを着けて迎えてくださいました。)

ワクワクを大事にしながら、ご自身の「好き」を探究し続けられている堀井さん。「どうしたらセンスを磨けるのだろうか」などと悶々としがちな不肖わたくしにも、「頭で考えず、自分の心を楽しませること」を、鳥のさえずりのように愛らしいお声で、優しく教えてくださったのでした。

堀井和子さんの新しい連載コーナーが、CLASKA ONLINE SHOP で始まります。

堀井さんが普段の暮らしやお出かけで見つけた風景、ふとした発見を、これからときどき教えていただく予定です。どうぞお楽しみに!

堀井和子さんと作ったアイテムは、上のバナーのリンク先でお求めになれます。

堀井和子さん プロフィール

1954年、東京生まれ。上智大学フランス語学科卒業。中学生の頃からの料理好きが嵩じて、料理スタイリストに。1984年から3年間、夫の仕事の関係でニューヨーク郊外で暮らした経験を生かし、帰国後、シンプルで洒落た食情報や料理を紹介。粉料理研究家として、家庭でパン作りを楽しむレシピや、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。ライフスタイル文化を牽引してきた、その美意識に憧れるファンは数知れず。現代のクリエイターたちにも多大な影響を与え続けている。

2016年5月9日 公開
写真・文:CLASKA ONLINE SHOP 速水真理